ACOERELA社インタビュー
2025年5月、弊社バイオチームがACOERELA社(シンガポール)を訪問し、インタビューを行いました。
脂質構造を可視化する独自の蛍光色素で、ライフサイエンスに革新をもたらす、ACOERELA社。
その社名に込められた想いや開発の裏側、そしてこれからのビジョンについて、お話を伺いました。

【目次】
芸術と科学が交差する──ACOERELA誕生の背景
——— 社名「ACOERELA」の由来を教えてください。
ACOERELA(アコエレラ)という社名は、スペイン語で「水彩画」を意味するacuarelaに由来しています。水溶性染料がもつ透明感と鮮やかな色彩を象徴する言葉でありながら、「cua」の部分を、同社の中核技術である「COE(Conjugated OligoElectrolytes:共役オリゴ電解質)」に置き換えることで、創造性と科学が交差するブランドイメージを表現しています。
色彩は、ただ美しいだけでなく、科学的な意味をもって「見えなかったものを見せる」力をもつ──ACOERELAの技術哲学が、この社名に込められています。
——— 開発のきっかけは何だったのでしょうか?
このプロジェクトの原点は、創業者が細胞外小胞(EV)解析に取り組む研究者の課題を目の当たりにしたことでした。
従来の蛍光染料では、ネガティブコントロールでさえ高いバックグラウンドが発生し、解析が困難だったといいます。解決策を模索するなかで、シンガポール国立大学のGui 教授 (Prof Guillermo Bazan / Scientific Advisor & CO-FOUNDER)との出会いがあり、共役オリゴ電解質(COE)の研究に携わることに。COEを最適化することで、EVに対して極めて高い特異性をもって染色できることがわかり、開発が加速しました。
この技術は、いまやEV解析にとどまらず、グラム染色、in vivoイメージング、脂質ナノ粒子など、さまざまな分野への応用が広がっています。
——— なぜこの分野に挑戦しようとしたのですか?
当時、EVなどナノスケールの脂質構造に対して、信頼できる色素が市場にほとんどなかったことが背景です。
ならば自分たちで解決しようと、研究者、化学者、トランスレーショナルリサーチの専門家が集まり、シンガポール国立大学からスピンアウトする形でACOERELAを立ち上げました。
——— ACOERELAらしい社風とは?
私たちは自らを「A-チーム」と呼び、役職に関係なく誰もが意見を言い合えるフラットな組織を目指しています。
厳密な科学と丁寧なものづくり、そして持続可能な働き方が調和する職場環境を大切にしています。

性能・再現性・操作性──研究現場を変える色素技術
——— 製品開発で重視していることは?
製品開発の柱として「性能」「再現性」「操作性」の3つを掲げています。
開発される色素は、高いS/N比(シグナル対ノイズ比)と低バックグラウンド干渉を実現し、さまざまな分析プラットフォームとの高い互換性を備えています。これにより、ユーザーが標準化や定量化といった研究作業をより安心・安定して行える環境が整えられています。
——— 現在、注力している応用分野は?
ACOERELAが注目するのは、「膜の明瞭性」が鍵となる研究分野です。
たとえば、以下のような最先端のテーマに対し、ACOERELAの蛍光色素は大きな貢献ができると考えています:
・in vivoトラッキング
・腫瘍イメージング
・細菌のグラムタイピング
・バイオセンシング、ナノディスク評価
脂質ベースの構造体が関わるあらゆる研究領域において、高解像度・高感度な可視化と定量解析の実現を目指しています。
——— 実際のユーザーからはどんな声が届いていますか?
実際の研究現場からは、「ゲーティングが圧倒的に楽になった」「バックグラウンドの少なさに驚いた」といった声が多数寄せられています。
ある研究者は、「ACOERELAの色素がEVに安定的に挿入され、信頼性の高いin vivoトラッキングが実現できた」と話しており、現場での手応えは確かなようです。
プレゼンテーションの場で「御社の色素はこれまで見た中で最高です」と立ち上がって声をかけてくれた研究者もいたとのことで、技術が研究者の背中を押す存在となっていることが伝わってきます。
目指す未来──最も必要とされる場所に明瞭さを
——— 今後、どのような未来を描いていますか?
5年後には脂質膜可視化分野でのトップブランドに。
10年後にはライフサイエンスや診断、環境モニタリングなどへ応用を拡大し、ナノ構造可視化の常識を変える存在になりたいと考えています。
変わらず大切にするのは、「最も必要とされる場所に、明瞭さを届ける」という使命です。
——— EV解析に始まり、いまや診断・環境応用まで見据えるACOERELAの技術。技術の根底には「研究者が探究を深められる環境を届けたい」という強い想いがありました。今後の展開がますます楽しみです。
