回収と抽出

細胞外小胞(Extracellular Vesicles)のイメージ

概要

 サンプル回収から細胞外小胞(EV)の抽出、EVの蛍光染色と洗浄までのプロトコルをご紹介します。

サンプル回収

細胞外小胞(EV)のサンプル保管条件の最適化は、EVの生理学的特性をふまえた結果を取得する必要があります。生体液サンプルの保管条件はEVの濃度と組成に影響を与える可能性があるため、新鮮なサンプルの抽出と分析が望ましい場合が多いですが、すべてのサンプルが同様であるとは限りません。 そのため回収時からEV抽出前処理までの間と、抽出から分析までの間に関して、サンプルごとに適した回収と保管のプロトコルが必要です。
 EVの保管方法は複雑で、さまざまな要因が関係しています。EVを抽出する生体液の種類が膨大であることが挙げられます。哺乳類の生体液は30種類以上あり、それぞれに複数のタイプのEVが含まれています。そして、EVの構成物や機能は保管条件によって異なる影響を受けます。これらの複雑さの範囲を考えると、MISEV2018ガイドラインはあらゆるEVサンプルに対応しきれておらず、ISEVはMISEV傘下でより多様なEVに対応できるガイドラインの開発を奨励しています。さらに、保管条件を検討した大規模な研究はまだほとんどないため、事前にEVに対する前処理や保管方法による影響を評価されることが推奨されます。

サンプル回収と保管条件の検討アプリケーションノート
サンプル回収と保管条件の検討:
 最も一般的に使用される生体サンプルからのEV抽出前後の操作と保管に関する一般的な検討事項を紹介したアプリケーションノートです。
 紹介する生体サンプルは、血液、尿、牛乳、気管支肺胞洗浄液(BALF)、精液、唾液、細胞培養上清液の7種となります。

細胞外小胞の抽出

 細胞外小胞(EV)の抽出には、古くから実施されている超遠心分離装置を使用する方法から抽出キットを使用する方法があります。抽出キットには複数のキットが存在し、抽出後の目的によって使い分けることが可能となります。抽出キットを使用する場合にはそれぞれの特性を理解した上でご使用されることを推奨いたします。

超遠心法

 超遠心分離装置による細胞外小胞の抽出は、最もよく知られたEVの抽出方法です。密度勾配法による抽出もありますが、ここでは最も一般的な超遠心分離法を使用した手法について紹介致します。
 以下はMSC(間葉系幹細胞)と血漿を用いたプロトコルで、VideoDropナノ粒子イメージングアナライザーやnanoFCMフローナノアナライザーなどのナノ粒子計測装置で計測するために最適な濃度になるよう調整しています。
超遠心法プロトコル

 細胞外小胞抽出方法(超遠心法)
 【サンプル】
  培養上清:Human MSC(間葉系幹細胞)
       1×106cells/15cm2ディッシュ以上細胞から48時間以上培養してコンフルエント
       になるまで培養したあとの上清を使用する
  血 漿 :100ul以上

 【抽出方法】
  ・2,000~3,000gで10分間遠⼼する
    ↓
  ・上清を回収し0.45μmのフィルタ(PVDF製メンブレン)を通す
    ↓
  ・フィルトレーションした上清を100,000gで70分間超遠心する
    ↓
  ・上清を捨てる 
   [Point] この操作は、遠沈管をできる限り振動させないように超遠心機のそばで
       ピペット(ペレット付近は触れない)もしくはデカンテーションで行う
    ↓
  ・PBSを1.5ml添加
    ↓
  ・100,000gで70分間超遠心する
    ↓
  ・上清を捨てる(上記の[Point]をふまえ実施)
    ↓
  ・ペレットにPBSを40ul加え懸濁する
    ↓
  ・サンプル毎に液量が50ulにPBSで調整
    ↓
  ・ナノ粒子計測してサイズ分布と濃度を計測

サイズ排除クロマトグラフィー法(SEC, Size Exclusion Chromatography)
 
 サイズ排除クロマトグラフィー(SEC, Size Exclusion Chromatography)法は、ゲルクロマトグラフィーを使用して細胞外小胞よりも小さなタンパク質と大きな細胞片などを除去して高純度の細胞外小胞のみを抽出することが可能です。また自然落下による滴下で分離するので、インタクトな細胞外小胞を抽出するできますので、細胞小胞を利用した細胞治療やDDSの研究に最適です。

細胞培養上清からのEV抽出プロトコル(qEV細胞外小胞抽出キット)

qEV細胞外小胞抽出キットを使用した培養上清からのEV抽出アプリケーションノート
培養上清からのEV抽出プロトコル:
細胞培養培地(CCM)の細胞から放出されるEVを分離することは多くのメリットをもたらします。本プロトコルでは、qEV 細胞外小胞抽出キットを使用して培養上清由来のEVを抽出するための、サンプル前処理からqEV抽出までの一連の手法について解説を行います。 
血液サンプル抽出プロトコル(qEV細胞外小胞抽出キット)

qEV細胞外小胞抽出キットを使用した血液からのEV抽出アプリケーションノート
血液からのEV抽出プロトコル:
血液から細胞外小胞を抽出する際の条件検討方法についてのガイダンスと推奨事項、qEV 細胞外小胞抽出キットを使用た抽出法について紹介します。
尿サンプル抽出プロトコル(qEV細胞外小胞抽出キット)

qEV細胞外小胞抽出キットを使用した尿からのEV抽出アプリケーションノート
尿からのEV抽出プロトコル:
qEV 細胞外小胞抽出キットを使用して尿由来のEVを抽出するための、サンプル前処理からqEV抽出までの一連の手法について解説しています。

細胞外小胞の染色・洗浄

 
 細胞外小胞の機能解析やフェノタイピングのためにnanoFCMフローナノアナライザーのようなナノサイズのフローサイトメトリーを利用した評価が行われています。評価のためには、EVの蛍光染色が必要となります。ここではEV抽出・染色・洗浄の評価やプロトコルを紹介致します。

細胞外小胞の一粒子特性解析系
細胞外小胞の一粒子特性解析系の最適化:
蛍光標識抗体を用いたEVの染色法について、特に染色後のEVの洗浄法に焦点を当てて紹介します。
金沢大学 華山教授のご研究室にご協力頂き、一粒子ごとの蛍光シグナルを計測し、蛍光EV集団と非蛍光集団それぞれのサイズ、濃度を判別・解析することができるNanoFCMフローナノアナライザーを使用して、超遠心分離法、サイズ排除クロマトグラフィー法、PSアフィニティ法を比較して検討したアプリケーションノートです。

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