細胞外小胞の最新プロトコル
概要
このページでは培養上清や血液などから細胞外小胞を回収し、分析評価するまでの一般的なプロトコルをはじめ、現状実施されている様々な生体液からEVを回収する方法やその保管までの事例を紹介いたします。これから細胞外小胞のご研究を始められる方は勿論、今まで細胞外小胞の抽出とその後の評価をされている方にも是非ご覧頂き、ご参考にして頂けましたら幸いです。
細胞外小胞とは
細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EV)という用語は、膜二重層を持ち、細胞内容物をランダムまたは厳選した物質を含み、細胞によって「自然に」産出された任意の細胞外小胞を指します。
細胞外小胞は、エクソソームやマイクロベシクルなど、さまざまなEVサブタイプが存在し、その多くはまだ特定または特徴つけられておりません。サブタイプは起源が異なり(図1)それらを定義することができますが、サイズ、組成、密度が重複しているためそれらを区別することは簡単ではありません。
EVは、細胞の恒常性、感染伝搬、がんの発生、循環器疾患、及び免疫応答における機能において関連性が認められるため、基礎研究及び臨床分野の研究での研究が進んでいます。EV分野の開発を進めるために細胞外小胞の生産、分離、精製、特性評価においてMISEVとよばれるガイドラインを確立し1、定期的に更新されています。さらに、細胞外小胞の応用分野としては間葉系幹細胞 (MSC) に由来する EV を使用した再生治療と、EV ベースの薬物送達システムの2つの主なカテゴリーに分類できます。治療法の分野にも拡大し、2015 年以来、EVベースの診断と治療の世界的な収益は急速に増加しています。
図1. 細胞外小胞の起源についての模式図
細胞外小胞は、その起源によってさまざまなサブタイプに分類されています。ここでは、その中でも代表的なものを中心に紹介しています。
エンドソームを起源にもつ細胞外小胞は、まず細胞膜が内側に窪み陥入して区画である小胞が形成されることから始まります(Early endosome)。その後、小胞は異なる運命をたどりますが上図では後期エンドソーム(Late endosome)が、管腔内小胞が侵入するマルチビシュラーボディ(MVB)に成熟する過程を示しています。MVBはその後、細胞膜と融合しエクソソーム(Exosomes)として知られる管腔内小胞を放出します。
細胞膜の窪みから右側にある細胞が細長い膜の突起は、ミグラソーム(Migrasome)です。ミグラソームは脱落する場合と劣化して管腔内小胞を放出する場合があります。
マイクロベシクル(Microvesicle)は、小さいもの(エクソソームと同じサイズ)と大きいものがあり、細胞膜をつまむように直接出芽して放出されます。
オートファジー機構の仲介と知られる二重膜に包まれたオートファゴソーム(Autophagosome)は細胞膜と融合し、一重膜の分泌オートファゴソームとして放出されます。この中にはミトコンドリアなどのオルガネラが含まれている場合があります。
アポトーシス小体は、アポトーシスによって産出される小胞で、ブレブ(membrane blebbing)や微小管突起(microtubule spikes)から出芽するものや数珠のようなApoptopodiaがあります。
確認されている最大のEVは、胎盤の栄養膜合胞体層の表面から生じた核の集合体であるsyncytial knotsが報告されています。
最後に、オンコソームはアポトーシス小体やマイクロベシクルと同様に膜から直接出芽し、特に癌細胞に由来しておりサイズが大きくなります。
参考文献
1. Théry, C. et al. Minimal information for studies of extracellular vesicles 2018 (MISEV2018): a position statement of the International Society for Extracellular Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines. Journal of Extracellular Vesicles 8, 1535750 (2019). https://doi.org:10.1080/20013078.2018.1535750