ケーススタディ

LI-710使用画像

蒸発散センサー(LI-710)

米国ユタ州での蒸発散量の計測

ユタ州地質調査所の地下水および湿地グループのシニア地質学者のPaul Inkenbrandt氏はユタ州中部の渦相関法による観測ステーションで「LI-710」蒸発散センサーを使用しています。結果の検証をご確認下さい。

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LI-710Land IQ:カリフォルニアにおけるフィールド規模での水使用の追跡画像
Land IQ:カリフォルニアにおけるフィールド規模での水使用の追跡

カリフォルニアにあるLand IQのシニアサイエンティストFrank Anderson氏とSeth Mulder氏は5つの気象観測所に「LI-710」蒸発散センサーを配置して、さまざまな作物条件下でデータを収集しました。異なる方法論がどのように相互検証されているか、さらに、Land IQ ETネットワークへの影響についてご確認いただけます。

米国ユタ州での蒸発散量の計測

ユタ州天然資源省に属するユタ州地質調査所の地下水・湿地グループの主な目的は、州内の地下水に関するデータの調査、定量化、普及です。

このグループのシニア地質学者であるPaul Inkenbrandt氏は、流域に出入りする水、特に作物や根深植物からの蒸発散を追跡する際に、蒸発散(ET)が最大の未知数であることを確認しています。

現在、ユタ州の蒸発散量データは、主にリファレンスETとリモートセンシングによる推定値に頼っています。Utah Flux Networkには、リモートセンシングによる推定値の地上検証データを提供する渦相関法フラックス観測タワーが4基あり、さらに5基が追加される予定です。

Inkenbrandt氏と共同研究者のKathryn Ladig氏は、ユタ州中部のウェリントンの町の近くにある2つのアルファルファ畑の間にある渦相関法フラックス観測タワーにLI-710蒸発散センサーを設置しました。このステーションでは、放射収支、ET、地温、地表からの熱、CO2フラックスなどを測定しています。

この装置は2022年の灌漑シーズンの半ばから使用されており、現在も測定を続けています。Inkenbrandt氏とLadig氏は、フラックスが比較的低く、蒸散がほとんどない冬でも、LI-710の結果が渦相関法と同等であることを確認しています。

 LI-710をフラックス測定器と並列に設置することで、装置の冗長性を確保することができ、測定値のチェックに有効でした。「すでにフラックスを測定しているフル渦相関法観測ステーションでの補助的な装置と見なすことができます。冗長性を持つことは、安心につながるかもしれません。」とInkenbrandt氏は話しています。

「すでにフラックスを測定しているフル渦相関法観測ステーションでの補助的な装置として見なせます。」

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Inkenbrandt氏は、LI-710の使いやすさとシンプルさ、そしてほぼすべてのデータロガーやRaspberry Piと通信できる点に注目しています。LI-710は集中的な計算や補正を行うのには便利ですが、微気象学の分野では、細かく補正をコントロールできないという欠点もあると言います。しかし、LI-710は気象学の専門知識を必要としないので、現在Penman- Monteith推定に頼っているAgriMetステーションなど、州内の多くの場所に設置できる可能性があると考えています。

「正しく配置されれば、ゲームチェンジャーになる可能性があります。ETを測定する場所の数が増えるだけでなく、本格的なタワーが設置できない場所や適切でない場所に設置できるかもしれません」

「ETを測定する場所の数が増えるだけでなく、本格的なタワーが設置できない場所や適切でない場所に設置できるかもしれません」

ユタ州、特にコロラド川流域では、ETの測定に大きな関心が集まっています。衛星データを使ってETを推定する新技術を前に、Inkenbrandt氏はLI-710の役割に期待しています。

「この新しい技術は、フィールドチェックデータと同じくらい優れているため、フィールドベースの測定値を持つことは、衛星ベースの推定値をチェックして検証する際に重要になるでしょう。西部の州では水管理の決定の際に頼るようになると思います」

ユタ州では、特に農業で消費される水の量を測定することが重要です。Inkenbrandt氏は、LI-710が多くの農業現場で実際のETを測定するのに役立つと見ています。「これは、特に西部で役に立つと思います」と彼は話しました。

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Land IQ:カリフォルニアにおけるフィールド規模での水使用の追跡

カリフォルニア州サクラメントに拠点を置く農業科学およびリモートセンシングの企業「Land IQ」での測定事例の紹介です。Land IQ ETは、フィールド規模での水使用量を推定するためのデータ駆動型モデルで、80か所以上の気象観測所からの地上検証データと複数の情報源からのリモートセンシング画像を読み込みます。同社の顧客には、約40の地下水維持管理機関(GSA)や灌漑地区が含まれ、35~40品種の作物からの蒸発散量を測定し、そのネットワークは6つの主要農業郡(Stanislaus、Madera、Fresno、Tulare、Kings、Kern)の全部または一部で300万エーカー(約121億4040万㎡)以上をカバーしています。

Land IQのシニアサイエンティスト、Frank Anderson氏は、地上局からのデータを収集・分析し、Land IQのデータ駆動型フィールド別ETモデルのバックボーンとして毎月情報を提供しています。「私たちは、顧客のために最も包括的で正確、かつ最高品質のデータを収集していることを誇りに思っています。」とコメントしています。

Anderson氏は、より大きなチームの一員として、同じくLand IQのシニアサイエンティストであるSeth Mulder氏と緊密に連携し、地上検証データステーションの設置やメンテナンス、独立した評価によるモデル後の分析を行っています。

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2022年11月以降、Land IQ ETネットワークに「LI-710 蒸散量センサー」を5台導入し、6台目を計画中です。「LI-710」は、気象観測所の装置と並べ、比較テストされました。

「“LI-710”は、休耕地やピスタチオ、アーモンド、柑橘類、アルファルファ(牧草)など、さまざまな作物で使用することを想定しています。アルファルファ(牧草)は定期的に挿し木を行うため、LI-710のETにばらつきやコントラストがあるのが特徴です」。

林冠の被覆率は、ピスタチオの25%からアーモンドの90%までさまざまです。今後、90%以上の被覆率を持つ柑橘類畑に「LI-710」を導入する予定です。

「LI-710」を設置したのは、太陽光発電量が少なく、ET値がゼロに近い難しい時期でした。Anderson氏は、センサーが既存のロガーシステムに簡単かつスムーズに接続し、データを送信できたことに感銘を受けており、また、「LI-710」の測定値は、既存の測定器と比較しても遜色ありません。

「小さなフラックスを解決できるという点が、“LI-710”の堅牢性を物語っています。結果に満足していますし、異なる方法論は互いに検証し合っています。」と述べています。

牧場に隣接するアルファルファ(牧草)畑では、霧がかかった状態において、牧場の粉塵により「LI-710」の内部フィルターが目詰まりする問題が発生しました。

「アンモニアや揮発性有機化合物、粉塵が存在するため、困難が伴います。」

その対策として、LI-COR社は、フィルターの交換を容易にするツールを開発しました。

Anderson氏は、「LI-710」の価格とステーション設置にかかる労力の両面から、大幅なコスト削減の可能性を感じています。樹木のために高さ20フィート(約6m)まである足場に設置された既存の気相観測ステーションに、「LI-710」を追加するのに2人で1時間もかかりませんでした。「“LI-710”は渦相関測定センサーなので、やはり渦相関法の要件に従わなければならず、足場をなくすことはできません。現在のインフラで“LI-710”を設置するには、おそらく4~6時間かかると推測しています」。彼らの従来のステーションですと、設置に8~12時間必要となります。

20年以上にわたってLI-CORの装置を使用してきたAnderson氏は、「LI-710」とそのフィールドステーションにおける可能性に期待しています。「私たちのモデル全体は、確実な地上検証データに基づいています。私たちのモデリングをより擁護しやすくし、ETの地域推定をより正確にし、その結果、エンドユーザーである生産者たちから強い同意を得ることができます。「LI-710」の発売は、Land IQとLI-CORが協力してネットワークを拡大する絶好の機会だと考えています。

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