溶存無機炭素アナライザー(LI-5300A)

水中の炭酸塩系における
無機炭素種の特性を明らかにする

水環境での炭素測定の必要性

炭素の特性評価は、水環境における炭素の役割や影響を解明する上で重要です。炭素の測定は、炭素の流れ、循環、交換だけでなく、生態系の生産性、人為的排出量、そして地球規模の炭素収支に関する貴重な洞察を提供します。

特に、炭素の測定は、海洋酸性化の理解と評価に役立ちます。海洋酸性化は、大気中のCO₂濃度上昇による危険な影響であり、水生生物に与える影響を明らかにすることができます。これにより、最終的には気候変動の緩和戦略、保全活動、持続可能な管理の実践に貢献することが期待されます。

図1. 海面（大気-水界面）における炭酸塩化学の代表的な例：海は温室効果ガスである二酸化炭素（CO₂）の最大の吸収源です。大気中の二酸化炭素は水と結びついて炭酸（H₂CO₃）を形成し、次に重炭酸イオン（HCO₃^–）および炭酸イオン（CO₃^2–）に変化します。そこから、炭酸イオンは溶解したカルシウムまたはマグネシウムイオンと反応して石灰岩や他の鉱物を形成し、炭素が隔離されることになります。

溶存無機炭素（DIC）測定の必要性

DICの測定は、水域システムが全球の炭素循環に果たす役割、特に海洋酸性化や気候変動の文脈での理解を深めるのに役立ちます。たとえば、DICの測定は炭素の挙動に関する洞察を提供します。これには炭素の供給源や吸収源、炭素フラックスの評価が含まれます。また、炭素の分散（例：生物地球化学的、化学的、または海洋的吸収）を説明する助けにもなります。

DICの測定は、以下の研究分野に有益です：

海洋酸性化
気候変動
地球化学に基づく炭素循環研究
水柱における炭素の挙動
堆積物コアからの間隙水

炭酸塩パラメータの計算
藻類関連の応用（例：藻類バイオ燃料）
正味生産量の測定
二酸化炭素の除去と隔離
石油およびガス産業の応用

DICとは？

溶存無機炭素（DIC）は、塩水や淡水のような水中炭酸塩系における無機炭素種の測定値です。二酸化炭素（CO₂）ガスが水に溶けると、炭酸（H₂CO₃）を形成し、その後、さまざまな成分（プロトン（H⁺）、重炭酸イオン（HCO₃⁻）、炭酸イオン（CO₃²⁻）など）に解離します。

水環境で、DICを含む各成分の濃度は、システムのpH、二酸化炭素の分圧（pCO₂）、および総アルカリ度によって影響を受けることがあります。

図1. ビェルムプロット（または炭酸塩種分布図）は、水溶液中の無機炭素種の濃度をpHの関数として示し、平衡にあるときの状態を表しています。これは、pH、pCO₂、総アルカリ度、およびDICの関係を視覚化するための理想的なツールです。

DICシステムの利点

・広範囲の値を正確に測定
・水サンプルから2分で100%のCO₂を抽出
・船舶や研究室での固定
・培養および培養測定に最適

測定方法

各DICアナライザーには、必須の二次ガスアナライザーが含まれています。LI-7815 CO₂/H₂Oトレースガスアナライザーは、正確な海水測定に最適であり、LI-850 CO₂/H₂Oアナライザーは、正確な淡水測定に最適です。

DICアナライザーとガスアナライザーは連携して、水サンプル中のDICを正確に測定します。DICアナライザーは、Tecan XLP6000シリンジポンプ、12ポートバルブシステム、ペルティエ式凝縮器、質量流量制御器、およびデータ収集と分析のための専用ソフトウェアを備えたコンピュータで構成されています。

DICとガスアナライザーの各組み合わせについての詳細は、以下の表を参照してください：

DIC アナライザー	測定	精度	サンプル量	測定時間
LI-5300A+LI-7815	合計DIC	通常0.1%；最大で0.05%	0.5～4mL	1サンプルあたり4分^※
LI-5350A+LI-850	合計DIC	通常0.15%；最大で0.1%	0.2～1.5mL	1サンプルあたり3.5分^※